Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 吸血鬼 (きゅうけつき) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.554 Zeichen · 381 Bildschirme
「サア、おのき、お前の顔を見ていると胸が悪くなる。おのきったら!」
彼女は老人を掻きのけて、室外へ立去ろうとした。
老人の方では、今逃げられてはと、一こくに押し戻す。押し戻したのが倭文子にしては、ひどく突き飛ばされた様に感じる。
「マア、主人に向って、何をするの?」
カッとのぼせ上って、目の前が真っ暗になって、もう何が何だか分らなかった。気絶する程腹が立ったのだ。
夢中で、老人にむしゃぶりついた様にも思う。また何かを持って、相手をたたきつけた様にも思う。あとになって考えて見ても激昂の極、目がくらんでしまって、何をしたのかハッキリは覚えていない。
気がつくと、老人は彼女の前に長々と横たわっていた。その胸に真赤な花が咲いて、グサッと突立った短剣の柄。
「アラッ!」
倭文子は、叫んだまま、足がすくんで、動けなくなった。
覚えはない。決して覚えはない。だが、相手が胸を刺されて倒れているのは、動かし難い事実だ。自分が殺したのではなくて、外に誰がこんなことをするものか。
「あたし、気が違ったのかしら」
あまりのことに信じ兼ねて、狂気の幻ではあるまいかと、両手で目をこすりながら、ヘタヘタと死骸の側へうずくまった。