Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 吸血鬼 (きゅうけつき) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.554 Zeichen · 381 Bildschirme
相手の美青年は僅かに肯いて、テーブルの上に右手を出した。恐ろしい運命のグラスを選ぶためにだ。
全く同じに見える二つのグラス。青年の手が僅二寸ばかり右に寄るか、左によるか、その一刹那のまぐれ当りによって、泣いてもわめいても取り返しのつかぬ生死の運命が決してしまうのだ。
可哀相な青年の額から、鼻の頭から、見る見る玉の膏汗がにじみ出して来た。
彼の右手の指先は空をもがいて、どっちかのグラスに近づこうとあせっていた。しかし、心はあせっても、指先がいうことを聞かぬ様に見えた。
だが、その間、相手の紳士とても、青年以上の大苦痛を味わわねばならなかった。彼はどれが「死のグラス」であるかを、チャンと知っていたからだ。
青年の指が右に左に迷い動くにつれて、彼の息使いが変った。心臓が破れる様に乱調子に躍った。
「早くし給え」紳士は耐え難くなって叫んだ。「君は卑怯だ。君は僕の表情からどちらがそのコップだかを読もうとしている。それは卑怯だ」
いわれて見ると、無意識にではあったが、彼はあさましくも、相手の表情の幽かな変化を見極めて、毒杯の方を避けようと焦っているのに気附いた。