Japanische Klassiker mit Furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme
徳川氏の世を覆したものは米利堅の黒船であった。浪士をして華族とならしめた新日本の軍国は北米合衆国の飛行機に粉砕されてしまった。儒教を基礎となした江戸時代の文化は滅びた後まで国民の木鐸となった。薩長浪士の構成した新国家は我々に何を残していったろう。まさか闇相場と豹変主義のみでもないだろう。
降る亜米利加に肌を濡らさじと言って自害した烈婦の出ない事を、今の世に問うて慨嘆するのは無理であろう。江戸時代にも長崎や下田に残った綺譚が幾らもあるではないか。
わたくしは好んで「後庭花」の曲を聞こうとするものではない。けれども洋人を見れば、ぞろぞろその後についてチョコレートを貰おうとする子供を憎むまい。道に落ちたシガーの吸殻を拾う紳士を嘲るまい。彼等をして、欺くなさしめたのは誰ぞ、誰の罪ぞ。
わたくしはホテルの食堂でふと心安くなった洋人から、その国の雑誌と新刊書を貰った。喜んで貪るようにこれを読んだ。口に飢を覚えるように、心にもまた常に飢を覚えている故である。珈琲の香も嗅ぎたい。アラン・ポーの詩もよみたい。町のムスメを憎しみ嘲けるに先だって、おのれの身を省みねばならない。