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Japanische Klassiker mit Furigana

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あづまばし

問はずがたり・吾妻橋 他十六篇

永井 荷風

Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme

Aozora Bunko

近い例を取れば娘常子の様子もそうである。乗れないほど雑沓するという汽車、硝子窓の満足なのは一つもない客車で、二日ちかく乗りつづけて行く事をも、さして難儀だとも思っていないらしい。その生れ育った箱崎町の焼跡の話やら、戦災を免れた水天宮の話などが出た時にも常子はたいした興味をも催さず、人間はどこで生れて何処で成長して、何処に住もうとも、それはその時の都合だと、飽くまで悟りきっているようにも、老人の目からは見えるのであった。

老妻の従妹になる産婆のお近は常子よりも七、八ツ年上で、もう四十を越しているのだが、この女も戦敗後の世の中についてはさしたる不安の念も抱いていないらしく、戦争中に較べると結婚する者が激増したと見え、甲府のようなところでも、どうかすると一日に七、八軒も廻らなければならないような急しいことがあると言って、月々に暴騰する米価や物価などは深く念頭に置いていないようにも思われた。

臼木はあの女達ももう若くはないのであるが、自分ほどには戦後の生活について底知れぬ恐怖を抱いていないらしく見られるのは、これを要するに年齢の相違に依るばかりで、外に仔細はないであろう。