Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

あづまばし

問はずがたり・吾妻橋 他十六篇

永井 荷風

Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme

Aozora Bunko

千代子さん、じゃお休みなさい。」

増田は千代子の手に接吻して、よろけながら歩き出そうとした。

「増ちゃん。傘貸して上げるよ。持ってくるから。一寸待っててよ。」

「いいですよ。いいですよ。漏れてかえります。」

言捨てて男はかなり強く降り出す雨をもかまわず、すぐさま闇の中に姿を消した。その足音の遠くなるのを聞きすましている中、千代子はいつともなく物思わしい様子になった。そして家内の時計が十時を打ち初める音を聞きつけるまで、雨の飛沫に漏れるのも厭わず軒の下に立っていた。

次の日から千代子は一時投げすてて置いた毛糸の編物を再び編みはじめた。

スェータは右の片腕だけが出来ていたので、こん度は左の方に取りかかったのだ。千代子は初ての人に逃げられた心の悲しみを、次のものによっていくらか慰め忘れさせることができたので、その礼をする心持で、Aに贈ろうと思った贈物をBに廻そうとしたのである。Bのおどおどして言いたいことも言えないような様子が、Aの利口ぶった隙間のない態度に比べて、いかにも純情らしくまたかわいそうに思われたのである。

左の片腕はその時の興行も中日にならない中に編上げられ、いよいよ首の周囲から胴に取りかかろうとした時である。