Japanische Klassiker mit Furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme
千代子は電燈の光をまともに、鍋の前に立っている客の男とその場のはずみで、ぴったり顔を見合せた。
二人の面には驚愕と怪訝の感情が電の如く閃き現れたが、互にあたりを憚ったらしくアラとも何とも言わなかった。
客の男は矢庭にポケットから紙幣束を掴出して、「会計、いくら。」
「お酒が三杯。」と佐藤はおでんの小皿を眺め、「四百三十四円になります。」
「剰銭はいらない。」と百円札五枚を投出すと共に、男は女の腕をひっ掴むようにして出て行った。外は真暗で風が吹いている。
「さア、片づけよう。」と佐藤は売れ残りのおでんが浮いている大きな鍋を両手に持上げて下におろした。それさえ殆ど心づかないように客の出て行った外の方を見送っていた千代子は俄におぞげ立ったような顔をして、
「あなた。」
「何だ。変な顔をしているじゃないか。」
「あなた。」と千代子は佐藤に寄添い、「ちがいないのよ。生きてるんだわ。」
「生きてる。誰が。」
「誰ッて。あの。あなた。」と哀みを請うような声をして佐藤の手を握り、
「あの人よ。たしかにそうだわ。」
「あの。お前のあの人かい。」
「そうよ。あなた。どうしましょう。」
「パンパン見たような女がいたじゃないか。