Japanische Klassiker mit Furigana
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こんわくのべん
困惑の弁
Lesen Sie 困惑の弁 (こんわくのべん) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.945 Zeichen · 8 Bildschirme
いささかの卑屈もない。肩を張って蒼穹を仰いでいる。傷一つ受けていない。無染である。その人に、太宰という下手くそな作家の、醜怪に嗄れた呟きが、いったい聞えるものかどうか。私の困惑は、ここに在る。
私は今まで、なんのいい小説も書いていない。すべて人真似である。学問はない。未だ三十一歳である。青二歳である。未だ世間を知らぬと言われても致しかたが無い。何も、無い。誇るべきもの何も無いのである。たった一つ、芥子粒ほどのプライドがある。それは、私が馬鹿であるということである。全く無益な、路傍の苦労ばかり、それも自ら求めて十年間、転輾して来たということである。けれども、また、考えてみると、それは、読者諸君が、これから文豪になるために、ちっとも必要なことではない。むだな苦労は、避け得られたら、それは避けたほうがよいのである。何事も、聡明に越したことはない。けれども私は、よほど頭がわるく、それにまた身のほど知らぬ自惚れもあり、人の制止も聞かばこそ、なに大丈夫、大丈夫だと匹夫の勇、泳げもせぬのに深潭に飛び込み、たちまち、あっぷあっぷ、眼もあてられぬ有様であった。そのような愚かな作家が、未来の鴎外、漱石を志しているこの雑誌の読者に、いったい、どんなことを語ればいいのか。