Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme

Aozora Bunko

後から後からわたしを小衝いてくるもの、ギシギシギシギシ動いてゆくものに押されているうち、わたしの硬かった足のうらがふわふわと柔かくなっていた。わたしはふわふわ歩いて行くうちに、ふと気がつくと沙漠のようなところに来ていた。いたるところに水溜りがあった。水溜りは夕方の空の血のような雲を映して燃えていた。やっぱし地球は割れてしまっているのがわかる。水溜りは焼け残った樹木の歯車のような影を映して怒っていた。大きな大きな蝙蝠が悲しげに鳴叫んだ。わたしもだんだん悲しくなった。わたしはだんだん透きとおって来るような気がした。透きとおってゆくような気がするのだけれど、足もとも眼の前も心細く薄暗くなってゆく。どうも、わたしはもう還ってゆくところを失った人間らしかった。わたしは水溜りのほとりに蹲ってしまった。両方の掌で頬をだきしめると、やがて頭をたれて、ひとり静かに泣き耽った。ひっそりと、うっとりと、まるで一生涯の涙があふれ出るように泣いていたのだ。ふと気がつくと、あっちの水溜りでも、こちらの水溜りでも、いたるところの水溜りにひとりずつ誰かが蹲っている。ひっそりと蹲って泣いている。