Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
「ありがとう」
男はそれを大切にポケットにしまった。
「だれからもプレゼントもらえなくて、ぼく、すごく孤独だったよ」
「夫婦って、きっと、おたがいに自分の一人ぼっちをプレゼントしあうものなのね」
女は、遠く白く煙った水平線に、目を移しながらいった。
「……でも、あなたはなぜ今日ここへ来たの? 偶然?」
「弘に逢いにきたのさ。昨日からあのホテルに泊っている。……クリスマスだからね」
「なぜここへ弘に?」
「いつか、君はここの海の中に弘を見たんだろう? ぼくも、同じものを見にきたんだ」
女は黙った。あのとき私の見たのは弘の不在だった。でも、それは同じことかもしれない。
「弘がここに呼んだんだね。君も、ぼくも」
それを、呼んだのも、弘の不在かもしれない。
二人は海をみつめた。灰白色に煙る海は、不気味に濁った襞をつぎつぎと重ねながら、無表情に岸壁に迫ってきて、はなやかな白い泡を盛りあげてはまた去る。そのたびに、未知なものがひたひたと押寄せ、鈍く光る壁の向うに、途方もなく巨大な生命が動いている気がする。
「……弘のプレゼントなのね。私たちを、ここで逢わせたのは」と女は低くいった。