Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
大きな瞳が、びっくりしたように彼をみつめている。色が白く、ぽっつりと小さな唇が紅い。
だが、彼への無関心を示すように、女はすぐ、くるりと横を向いた。鼻が高く、耳のうしろのほつれ毛が可憐に風にそよぎ、女はまだ十代のように思えた。
女は、しかし歩き出さなかった。彼はあわてて『憩』を買い、どぎまぎと我にかえりながら、まっすぐに下宿へといそいだ。……どうせ、あんな美しい娘なんて、おれなんかとは関係のない遠い生物でしかないのだ、とくりかえし心に呟きつづけながら。
下宿の二階には、彼ら夫婦をふくめ四世帯が住んでいるので、二階にも炊事場と便所がある。その便所には窓があって、そこからまっすぐに煙草屋のある四辻がながめられる。
彼が、本当にその女が気になりはじめたのは、それから一時間近くたってからだ。用を足して、なにげなく窓からその四辻を見下ろし、彼はショックを胸に受けた。焦茶色の外套の女が、まだそこに立っているのだ。
奇妙な、錐を胸に揉みこまれたようなショックだった。部屋にもどり、すでに隅々まで読みつくした新聞をひっくりかえしながら、だが、彼の目は活字やその意味を追っていたのではなかった。