Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
……だが、はたしていま、彼に弁当を半分すすめたものだろうか?
じつをいえば、そのときぼくを躊躇させたものは、ほかならぬ自分自身の昼食が半分に減ること、そんな自分の空腹の想像などではなかった。そんなことは、まったくぼくの頭にはなかった。――それは、恥ずかしいことだが、「善いこと」をするときの、あの照れくささであり、奇妙な後ろめたさだった。
つづいて、ぼくに弁当をつくるために昼食を抜いている、母への罪悪がはじまる予感がきた。気の弱いぼくのことだ、一度それをしたら、おそらく習慣にせざるをえなくなってしまうだろう。すると、帰途の汽車の中での、あの疼痛に似たせつない空腹感、やがて空ききってそれが痛みかどうかさえわからなくなり、ただ、どこにも力の入れようのない苛立たしさがからだ全体に漂いだし、遠くのものがかすみ、近いものが揺れて見えはじめる、あのその次の状態が、なまなましくぼくによみがえった。……だが、結局ぼくが弁当を分けることを中止しようと思ったのは、神経質で孤高で傲慢なほどプライドのつよい山口が、そのぼくの押売りじみた親切に、虚心にこたえてくれっこないという判断であり、おそれだった。