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Japanische Klassiker mit Furigana

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ゆうもやのなか

夕靄の中

山本 周五郎

Lesen Sie 夕靄の中 (ゆうもやのなか) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.522 Zeichen · 19 Bildschirme

Aozora Bunko

……そこは片側が武家屋敷、片側が町家であった。暖かかった冬の一日の、もうすっかり傾いた日ざしが、道の上に長く影をおとしている。黄昏には間のある、ふと往来の途絶えるいっとき。街ぜんたいがひそかに溜息でもつくような、沈んだ、うらさびしい時刻であった。

――おじけがついてる、こんな感じは初めてだ、ことによると危ない、年貢のおさめどきになるかもしれないぞ。

しかし彼の表情は少しも変らなかった。歩く調子も決して乱れはしない、人の眼には平凡なお店者とみえるだろう、いくらか苦みばしった美男で、身だしなみのいい、若い手代といったふうに、……慥かに、これまで彼はついぞ、その自信を裏切られたことはなかった。それだけが、いまの彼には命の綱のようであった。――いつかはそうなる、誰だって、いつかいちどはそうなるんだ、が、今はいけない、少なくともあと一日、今夜ひと晩でもいい、あいつを片づけるまでは、それまではどんなことをしたって。

大きな寺の門が見えて来た。

上野の山内の森が、眩しく夕焼けの光りをあびている。すると寺は根岸の大宗寺だ。彼は右手をふところへ入れた、腹巻の中の短刀へ触るまえに、ひとさし指の爪際が鋭く痛んだ。