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Japanische Klassiker mit Furigana

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ゆうがおのもん

夕顔の門

吉川 英治

Lesen Sie 夕顔の門 (ゆうがおのもん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.956 Zeichen · 29 Bildschirme

Aozora Bunko

『……居りません』

と、冷ややかに云ったのみで。

兵庫は、書き物に疲れた眼をあげて、筆架へあらく筆を擱いた。

彼の周りは、書物に埋っていた。

伸びるままに委せてある庭の雑草のように、彼の身のまわりも、独り者のように、散らかって、塵が積っていた。

『居ない? ……。それは当り前だ。そんな所に立った儘、庭木を見ていた所で、見える筈はない。外を歩いて探して来い』

『…………』

彼女は然し――その立っている所から動かなかった。

今し方、良人に代って、鷹小屋の中へ這入って鷹へ餌をやる時、過まって、鷹を逃がしてしまったのである。

鷹の糞だの、羽虫のにおいだのがして、その中へ這入ると、彼女はいつもむっとする。だから彼女は鷹が嫌いであり、鷹に不親切であった。

飼い馴れている鷹であるから、本来逃げる筈のものではないが、彼女の姿を見ると、鷹も怒るのであった。過失ちの因は、そこにあった。

それを良人の兵庫は、叱りはしなかったが、

(探して来い)

と、先刻から云っているのだった。

(馴れた者が、口笛をふくなり、手をあげて呼べば、鷹は拳に降りてくる。おまえも、鷹匠の妻ではないか)