Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ゆめはよびかわす

夢は呼び交す

蒲原 有明

Lesen Sie 夢は呼び交す (ゆめはよびかわす) von 蒲原 有明 (かんばらありあけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.126 Zeichen · 210 Bildschirme

Aozora Bunko

鶴見は颱風で一度倒されたということを聞いたのみで、その後の状態については知らされていない。想うに、樹勢は一時衰えていて、それが追々に回復して来たというように見られる。今年は極めて威勢が好い。忽ちのうちに若葉が重って幹の大半を隠してしまう。花つきの悪いのはそのためであろう。それでも若葉の底の方の、思いもかけぬところから真紅の花の蕾が覗く。二つ三つ咲きかけたのもある。

そこへ翅の白い蝶がいちはやく訪れて来て、ひらひらと羽ばたいて、花に即いたり花を離れたりして、いつまでも花のあたりを去りかねて飛び廻っている。

そのうちに朝日は柘榴のこんもりとしてそっくり繁って行く若葉の端々を唐棣色に染め出し、漸くにして濡縁にも及んで来る。

鶴見はこうやって濡縁に及ぼして来た朝日の脚どりを徐かにながめていたが、やや暫く立ってから、ふと昨夜読んだ本のことを思い起した。

「おお、そうであった。朝目よしだ。」太い息をつくようにして、ただそれだけのことをいって、また目をつぶった。

鶴見が読んだというのは『死者の書』である。

その本のなかでは世に流伝している中将姫の物語が、俗見とは全く違った方角から取扱われている。