Japanische Klassiker mit Furigana
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あやかしのつづみ
夢野久作怪奇幻想傑作選 あやかしの鼓
夢野 久作
Lesen Sie 夢野久作怪奇幻想傑作選 あやかしの鼓 (あやかしのつづみ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 76.558 Zeichen · 153 Bildschirme
「この鼓はいつ頃お求めになったのでしょうか」
「サア。よく知りませんが」
「ちょっと胴を拝見してもいいでしょうか」
「エエ。どうぞ」と妻木君は変にカスレた声で云った。
私は黄色くなりかけている古ぼけた調緒をゆるめて胴を外して、乳袋の内側を一眼見るとハッと息を詰めた。
久能張りのサミダレになった鉋目がまだ新しく見える胴の内側には、蛇の鱗ソックリに綾取った赤樫の木目が眼を刺すようにイライラと顕われていたからである。私の両手は本物の蛇を掴んだあとのようにわななき出して思わず胴を取り落した。胴はコロコロと私の膝の上から転がり落ちて、横に坐っている妻木君の膝にコツンとぶつかった。
「アッハッハッハッハッ」
と不意に妻木君が笑い出した。たまらなくコミ上げて来る笑いと一緒に、身体をよじって腹を押えて、しまいには畳の上にたおれてノタ打ちまわりながら、ヒステリー患者のように笑いつづけた。
「アッハッハッハッハハハハハ、とうとう一パイ喰いましたね……ヒッヒッホッホッホホハハハハハ。ヒッヒッヒッヒッ……」
私は歯の根も合わぬ位ふるえ出した。恐ろしいのか気味悪いのか、それとも腹立たしいのかわからぬまま、妻木君の黒い眼鏡を見つめて戦いていたが、やがてその笑いが静まって来ると私の心持ちもそれにつれて不思議に落ち付いて来た。