Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 254.021 Zeichen · 495 Bildschirme
その夜中ごろ、天性の怪足力に馬力をかけて、一足飛びに関ヶ原の本陣から程遠からぬ美濃と近江の国境、寝物語の里まで飛んで来たがんりきの百の野郎は、案内知ったる寝物語の里の近江屋の方の雨戸をトントンと叩いてみると、それに手応えがありました。こんな深夜に、このささやかな合図で忽ち手応えのあるところを以てして見ると、先方も相当に待つ身ではあるらしい。
「まだ起きていたのかい」
戸がそっと細目にあけられたので、そこから吸い込まれるように中へ身を消したがんりきの百は、中へ入って畳の上へ足を投げ出すと共に脚絆をほぐしかけると、行燈をかき立てて、そこへ、しどけない上にしどけない寝巻姿の淫婦お蘭が、くの字になって現われ、五分珠の銀のかんざしで、やけに頭をかきながら、
「待ってましたよ、あんまり遅いじゃないかえ」
「今日の晩までという約束だから、真夜中が過ぎちゃ男がすたると思って、急いでやって来たよ」
「御苦労だったねえ、頼まれもしないのに」
「おや? 頼まれないでする心意気を買っちゃあくれねえのかい」
「買いますとも、買い過ぎて、つい、あれもこれもとよけいな取越苦労をしながら待ちくたびれていましたが、苦労甲斐がありましたかねえ」