Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme

Aozora Bunko

安倍川を食べてしまうと、お雪ちゃんは縫取りを取り出して、例の胡蝶の模様を余念なく縫い取りにかかりました。

その時分とても、下の三味線はいよいよ興に乗るので、針を運ぶお雪ちゃんの気もときめいて、

「池田先生のお弟子さんには、芸人がいらっしゃるわ――ずいぶん御熱心ね」

といって、自分も針を運びながら、その三味線の音色には聞き惚れているらしい。

机竜之助は、もう横にならないで、やぐらの上に頬杖をついたまま、キチンと坐って、沈黙しているのは御同然に、三味線の音色そのものに、暫しわれを忘るるの余裕を与えられているのかも知れません。

ややあって、お雪ちゃんが、針の手を休めないで、

おととしの十月

中の亥の子に

炬燵あけた祝いとて

ここで枕並べてこのかた

女房のふところには

鬼がすむか蛇がすむか

それほど心残りなら

泣かしゃんせ

泣かしゃんせ

その涙が

蜆川へ流れたら

小春が汲んで

飲みゃろうぞ

と三味線に合わせて口ずさみましたから、たれよりも最も多く机竜之助が驚きました。

何だ――お前それを知っているのか、いつそんなことを覚えたのだね、小娘は油断がならない、と心底から驚いたかも知れません。