Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 368.567 Zeichen · 720 Bildschirme
この時、不意に屋根の上に声があって、
「あんた方、海が見たければ、千鳥塚までいらっしゃい、千鳥塚なら、海がよく見えますよ」
二人が驚いて、言い合わせたように屋根の上に眼を向けると、そこに一人の老人が首を出していました。
米友は、それを一目見て、ああこれだ、先年自分に温かい御飯と、温かい味噌汁をめぐんでくれた好人はこの爺さんに違いない、と見たけれども、爺さんの方では、そんなこと、とうに忘れてしまっているらしい。
「千鳥塚というのはどこですか」
女の人がたずね返すと、
「千鳥塚は天王山にありますがねえ、この道をこう行って、こう戻らっしゃると……」
千鳥塚の案内をかなり細かく親切にしてくれる。
「どうも有難う」
女の人が礼をいう。
「さあ――」
米友も、ここを立去らねばならぬ、千鳥塚とやらまで、この女性のお供をする義務は断じてない。
だが、この際、米友もなんだか、急に立去りたくない気持がする。
千鳥塚を聞いて、それへ行こうとする婦人も、なんとなく連れが欲しいようだ。
期せずして二人は、最初からの道連れででもあったように、すれつもつれつ……というのもおかしいが、後になり先になって、この寺の境内を出て行きました。