Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠2
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠2 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.601 Zeichen · 387 Bildschirme
たのです。無論、それと知ってこの村あたりを犯す盗人の類がある由もありません。
「狼が来るはずはありませんね」
金ちゃんの母親も、ムクの走り込んだ竹藪を見込んで不審顔をしています。
「ムクや、ムクや」
お玉は縁側へ立ち上ってムクを呼びますと、しばらくして物を唸りつけるムクの声、竹藪の中がガサガサすると見れば、そこから飛んで出たムクは、今度は一散に木戸の方へと走りました。
その木戸口から今、一人の人が入って来る、よくこの辺に見える薬の行商体の人でありまして、その男が木戸口からお玉のいる方へ進んで来ますと、いま竹藪から走り出したムクはその人に向って、噛みつかんばかりに猛然として迫って行きます。
行商体の男は、タジタジとしましたけれども、犬をなだめるようにして、お玉のいる方へ近寄って来ようとします。それをムクは近寄らせまいと肉薄しているようにも見えます。さすがにまだ噛みつきも、食いつきもしませんけれど、ムクの気勢を見れば、絶えて久しく現われなかった狼を追う時の眼の色が現われておりますから、
「ムク、人様を吠えてはいけませんよ」
お玉はこっちで犬を制したけれども、ムクは決して柔順になりませんでした。