Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠2
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠2 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.601 Zeichen · 387 Bildschirme
「そうだなあ」
十二
船大工の与兵衛は仕事場の中で煙草を喫んでいました。炉の焚火だけが明りで、広い仕事場がガランとして真暗でありました。
「何とかしなくっちゃあ」
ひとりで呟いている。
伊勢の海は昼でさえも静かなものであります。夜になったのでは雌波の音一つ立たないで、阿漕ヶ浦で鳴く千鳥が遠音に聞こえるくらいのものでありました。
「困ったことだわい」
印伝革のかますから煙草を詰め替える与兵衛は船大工の親方、年はとっているが眼は光る。
「今晩は」
裏口でおとなう声。
「へーい」
内で与兵衛が返事。
「あの、大湊の与兵衛さんとおっしゃるのはこちら様で……」
「与兵衛はうちだが、お前さんは」
「古市から参りましたが」
「古市から?」
与兵衛は立たないで耳を傾けて、
「古市から? 古市のどちら様からおいでなすった」
「あの、備前屋から」
「備前屋さんから?」
与兵衛はこの時ようやく立って、
「どうも女衆の声のようだが」
戸をあけると、手拭で面を包んだ女、逃げ込むようにして家の中へ入って、
「こちら様に小島さんとおっしゃるお方がおいででございましょうか」
「小島……してお前さんは何しにおいでなすった」