Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 242.044 Zeichen · 477 Bildschirme
四方に雲があって、月はさながら、群がる雲と雲との間を避けて行くもののように、景信と陣馬ヶ原の山々は、半ば雲霧に蔽われ、道志、丹沢の山々の峰と谷は、はっきりと見えて、洞然たるパノラマ。その中に置き据えられた一つの駕籠。
机竜之助は、その中に、堀河の国広を抱いて、うっとりと眠るともなく、醒めるともなく、天狗様の怪異談まで聞いて、駕籠のとどまったことを夢心地に覚えていると――
その時、不意に風でも吹き起ったもののように、サーッと尾萱の鳴る音が、行手ではなく、自分たちが今たどって来た道筋から起ったかと思うと、月影に見ゆるのは、旅人らしい一箇の人影です。
「今晩は」
その人影は早くも、休んでいた駕籠の傍へ来た。先方から挨拶の言葉で、二人の駕籠屋があわてました。
「今晩は」
「いいあんばいに、雨があがりましたね」
「ええ、いいあんばいに雨があがりましたよ」
「どちらへおいでになりますね」
「ええ、上野原の方へ。急病人がありましたのでね」
「それは、それは」
といって、旅人はお辞儀をして、その駕籠のわきの細道を通りぬけようとして、また踏みとどまり、
「済みませんが、火を一つお貸しなすって下さいまし」