Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠7

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 242.044 Zeichen · 477 Bildschirme

Aozora Bunko

「諏訪の湖というのはどちらに当ります」

「え、湖でございますか。湖は、もうこのすぐ下がそれでございますよ、障子をあけてごらんになると、一面に……」

女は、今までそれを気がつかなかったお客は、多分、暗くなってから着いたお客だろうと思い、

「今夜は、お月夜かも知れません、障子をあけましょうか」

気を利かして、女は剃刀の手を休め、客をして月明の諏訪の湖をながめ飽かしめんとした好意を、竜之助は断わって、

「風が冷たいからそれには及ぶまい。そうだな、月というものを見たのは、いつのことか。伊勢の阿漕ヶ浦というところで見たのが、あれが最後だろう。いや、あれは見たのではない、聞いたのだ。夕凪と朝凪に名を得た静かな伊勢の海、遠く潮鳴りの音がして、その間を千鳥が鳴いて通った時、浜辺と海がぼうっと明るくなったように覚えている。多分、あの時に月がのぼったのだろう。あれ以来見たことはもちろん、聞いたこともない」

竜之助が、謎のような独語。急に剃刀の手を止めた女の面が美しいものになりました。

この女は、もうよい年ですけれども、お化粧をして、赤い縮緬の前掛をしていましたが、

「まあ、伊勢からおいでになりましたのですか」