Japanische Klassiker mit Furigana
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てんのはいざい
天の配剤
菊池 寛
Lesen Sie 天の配剤 (てんのはいざい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.508 Zeichen · 5 Bildschirme
二幕が、もう了りかけた時であった。四十ばかりの女が、自分の背後から靠れかゝるようにした。自分は、その容子を変に思った。自分は掏摸ではないかと、直覚的に思った。自分は、急いで左の袂を探って見た。自分が怖れた通り蟇口が無くなって居たのである。念のために、右の袂を探った。がそこに自分の手に触れたのは堅い下足札だけであったのである。
自分は、てっきりその四十女が、盗んだものと確信した。
「君は、僕の蟇口を知らないか。」と、自分はそんなふうに、露骨に云い出したように記憶して居る。
「まあ! けったいもないこと云いなはんな。」と、その女も怒った。自分達が、二三度押し問答をして居る内に、相手の女は二三人の味方を得た。気が付くと、その女は劇場のお茶子であったのである。同類らしい女達が、見る/\内に、七八人も集まった。口不調法な自分は、手もなく云いくるめられてしまった。その中に、相手の方には、お茶子の取締らしい男まで加わってしまった。
その四十女は、可なり周囲の者から、信用があるらしかった。自分が、いくら云い争っても、何も証拠はなかった。おしまいには自分の方が旗色が悪くなって、謝罪までさゝれそうになった。