Japanische Klassiker mit Furigana
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てんぽうのひこうじゅつ
天保の飛行術
野村 胡堂
Lesen Sie 天保の飛行術 (てんぽうのひこうじゅつ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.024 Zeichen · 28 Bildschirme
その日、五人がかりで組立てた鶴次郎の飛行具も出来上りました。折も折、まことに絶好の白山日和。
麓からその日を期して登って来た奥村主殿の前に、二人は自信満々の作品を引き出したのです。
「それではよいか」
岩角に腰打ちかけた奥村主殿、その前に用意を整えた幸吉と鶴次郎、互いに敵意に充ちた一瞥を交して、銘々の飛行具を着けました。
「行くぞ、鶴次郎」
「応っ」
二人は御前平の斜面に立って、手頃の風を待ったのです。やがて鶴次郎が飛び出しました、斜面から深い谷の上へ、鼓翼飛行具がゆらゆらと浮ぶのを見ると、続いて幸吉の飛行具は、風に送られてゆらりと飛び出します。
鶴次郎の飛行具が手と足を動かし乍ら、必死と働き続けるのに対して、幸吉の飛行具は、翼に受ける風圧を利用した滑翔飛行具で、手も、翼も動かさず、極めて安らかに、千仞の谷の上を巨大な鳶のように、ゆらりゆらりと飛ぶのでした。
向うの峰の木の間から、此の光景を、目を放たずに見つめて居る一人の男がありました。言うまでもなくそれは旅人清作の一宮隼人。
此の時、日本最初の飛行機が二台、白山の奥の谷の上に、その翼を並べて、二羽の怪鳥の如く飛ぶのです。