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Japanische Klassiker mit Furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.830 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

「確りして下さい、幽里子さん」

恐ろしい不吉な予感にさいなまれて、幽里子が自分の手で押えた胸のあたりを見ると、

「あッ、血」

左の胸――乳の下あたり、パッと浸み出しているのは、青磁色の服を染て、大輪の牡丹を見るような血潮ではありませんか。

「待って下さい、直ぐ医者を呼びますから」

立ち上ろうとする東野南次は、物言わぬ幽里子の、瞳の歎きに呼び止められました。

「何んか? 水ですか、幽里子さん」

「――――」

ともすれば昏々と死の淵に引入れられそうな幽里子は、僅かに夢幻の眼を開くと、

「――――」

小さい――血の気のうせた唇が僅かに動きます。

東野南次はその瀕死の乙女の、――恋人を求める唇を見詰めて、黙って顔を反けるほどの道学者では無かったのです。

「幽里子さん、死んではいけない、死んではいけない、――いえ、私は決して幽里子さんを死なせない」

それはいずれ、真の恋人の手に渡してやる処女であったにしても、暫らくは許せ、

「幽里子さん、幽里子さん、死んではいけない」

傷ついた幽里子を抱き上げて、同じビルディングの二階にいる外科医の診察室まで運ぶうち、東野南次の唇は幽里子の額にキッスの雨を降らせていたのです。