Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.830 Zeichen · 24 Bildschirme
が、一つ一つ恐ろしい強烈な印象で、東野南次の記憶に焼き付いていくのです。
「あの――」
「まず、お通り下さい、私が東野南次ですが」
南次はあわて気味に椅子をすすめて、兎にも角にもこの素晴らしいお客様と相対しました。
「あの――」
若い女客は、手提袋から可愛らしいハンケチを出して、それをまさぐりながら、暫らくは切出し兼ねている様子です。
それと相対して掛けた東野南次は、その言葉の続きを待つように、実は客の美しさを享楽しておりました。ためらい勝ちな風情や、自分を勇気づけようとしている努力の表情など、活々としている癖にいじらしくて、それはこの上もなく魅力的なものです。
何処かで見たことのあるような――東野南次はフトそんな事を考えておりました。表情にも物いいにも、何んの技巧的なところの無いのを見ると、勿論映画女優や踊り子ではありません。
どうかしたら、何処かで講演した時、聴衆の最前列にいて、一番熱心に自分の話を聴き入っていた、美しい処女がそれでは無かったか知ら――南次はフトそんな事も考えましたが、素より確かな記憶があってのことではありません。
「あの――手紙を書いて頂けませんでしょうか」