Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.830 Zeichen · 24 Bildschirme
が、いつまで経っても、博士論文の代作を頼みに来る者もなく、懸賞小説の応募作品を書いてくれといって来るものもありません。
一ヶ月程たって、東野南次の収入の総計は、何んと金一円五十銭也と、干し藷が三片也、これはビルディングの小母さんに頼まれて、北海道にいる悴へ書いた手紙のお礼だったのです。
部屋代がただでも、これでは電車賃にもなりません。東野南次もいよいよ此商売を止して、明日からヤミ屋にでもなろうかと決心した時でした。
トン、トンと遠慮勝に扉を叩く音が聴えるではありませんか。
東野南次は、あわてて噛りかけの干し藷を衣嚢に押込んで、グイと反り身になると、
「カム・イン」
と英語でやったものです。
「御免遊ばせ」
扉がスーと開いて、恐る恐る半身を現わしたのは、――東野南次、危く三寸の息の根が止まるところでした。
窓から真っ直ぐに受けた光線に浮き上って、それは実にパッと咲いたような美しい婦人だったのです。最初東野南次の意識したのは、全体の調和から来る、微妙な美しさだけでしたが、やがてそれは、二十二三歳の初夏らしい軽やかな洋装をした婦人で、淡い青磁色――あの砧青磁という品の良い色をした服装と、健康そうな薄桃色の皮膚の色とが、よく調和していることや、表情的な小さい唇の線や、昔夢二が好んで描いた、少し尻さがりの大きい眼など