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Japanische Klassiker mit Furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.447 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

旅人を甘夢に誘った薬品は、ハシシ(hashish)という麻薬であったと言われますが、大寿院の使ったのもこれとよく似た薬品で、祈祷と言ったのは、一種の催眠術の暗示に過ぎなかったのですが、当時の人はそんなからくりを分る由もありません。

その晩の村松金之助の夢は、どんなに怪奇妖艶を極めたことか、――真珠色の雲の中に、京姫と手を取り合って、心のまま睦び戯れた長い長い夢、翌る朝ハッと眼を覚した村松金之助は、なまぬるの湯に一と晩浸っていたような、不思議な興奮と疲労のうちに、言うに言われぬ甘美な哀愁の残滓を反芻していたのです。

夢――何という現実らしい夢だったでしょう。それは妖艶で悩ましくて、存分に刺戟的であったにしても、妙に物淋しい清純でさえあるものでした。

その翌る晩は暗示も効力を失って、ただ薄黒い悪夢と、それよりも不愉快な不眠が続いただけ、その翌る晩も、その翌る晩も。そして村松金之助は、京姫の顔の飢にさいなまれて、居ても起ってもいられない焦燥に悩まされているのでした。

思い切って山の宿の大寿院を訪ねたのはたった四日目でした。又も同じ祈祷と薬とそしてその晩の甘美な夢と――。