Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.447 Zeichen · 21 Bildschirme
いよいよ明日は輿入という前の晩のこと、京姫は何やら誘われるような心持で、フラフラと席を起って、涼風を容れる為に開けて置いた縁側から、庭下駄を突っかけたまま、月の明るい庭に降り立ちました。
輿入の仕度に紛れて、誰も気の付いた者はありません。
月の光の下を、芝生から池のほとりへ、築山の裾から植込の中を抜けると、
「あッ」
曾て表の青侍が迷い込んだ木戸のあたりに、何やらフラフラと動くものがあるではありませんか。
京姫はこの恐る可き闖入者が、男性であることを意識し乍ら、不思議に恐れる気持が無くなってしまいました。それどころで無く、妙に引寄せられるような心持で、一歩、二歩、その不気味な物の蔭に歩み寄ったのです。
「――――」
相手も姫の顔を見た様子ですが、さして驚く風もなく、木戸の柱に凭れたまま、がっくり首を落しました。
「お前はいつぞやの――」
京姫は絶句しました。それは紛れもなく何時ぞや此処に迷い込んで、腰元達に嬲りものにされた青侍の、見る影もなく痩せさらばえた姿ではありませんか。
「姫君様、お許し下さいませ。――もう一度顔を拝し度さ、――命に賭けて参りました」