Japanische Klassiker mit Furigana
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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
Lesen Sie 契りきぬ (ちぎりきぬ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.757 Zeichen · 66 Bildschirme
――なんとでも思うがいい、いまにわかることさ、あたしがどんな女になるか、……そのときになってびっくりしないがいい。
おなつは平然とそっぽを向いていた。
さっきお菊に呼びかけたときから、ふしぎに度胸がきまっていた。百余日の生活でいつか感情が慣れていたのかもしれない。生きるためには人間はいろいろなことをする。盗んだり、人を殺傷する者さえある。いちがいに汚れた世界というけれども、あれだけ多くの客がここへ来て楽しんでゆくではないか。ここにいる女たちだって、自分の好きでやっている者もなくはないだろうが、多くの者は親兄弟か身内を生かすために稼いでいる、なかには病んでいる良人や子供のある者もいるという。みんな生きるためなのだ。これが汚れた世界だとすれば、こんな世界の存在を余儀なくさせる世間もまた汚らわしい筈だ。
――このなかで生きてやれ、誰よりもこの世界の女らしく、みんながあっというような生きかたをしてやれ。
おなつはこう肚をきめ、そして、それにはぜひとも北原というその人を第一の客にしようと決心したのであった。
「まあごまめの歯ぎしりだね、気の毒だけれど」おてつはこう云って笑った「――あの方だけはだめさ、あの八方やぶれにゃ手も足も出やしないよっ、どうしてどうして、おまえさんたちがしゃちょこ立をしたって」