Japanische Klassiker mit Furigana
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ちぎりきぬ
契りきぬ
山本 周五郎
Lesen Sie 契りきぬ (ちぎりきぬ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.757 Zeichen · 66 Bildschirme
おなつの心のなかを閃光のようになにかがはしった。なんであるかはもちろんわからない。一瞬の光に似たものがさっと心をかすめ、われ知らず身がふるえた。立って着物を着るあいだも、動悸が激しく搏ち、手足が自由にならないような感じだった。――まるでなにかに怯えているようだ、どうしてこんなに身の竦むような気持がするのだろうか。そんなふうに自分で不審なほどおろおろしていた。……むろん火もいけてあるし、鉄瓶の湯もまだ熱かった。手早く燗をし、皿小鉢をそろえて、伊代を起さないように、そっと廊下へ出ていった。
居間へゆくと精之助の姿がみえなかった。どうしたのかと思っていると、隣りの仏間の襖があいていて、そこから彼の声が聞えた。
「有難う、いますぐゆくから」
そうしてすぐに彼は出て来た。すでに寝衣になっていて、こっちへ来て坐ると、
「寝ているところを済まなかった。少し相手をして貰いたいんだが」
「こんな見ぐるしい恰好でございまして」
「それで結構だよ。そのほうがいい、飾らないほうがよほど美しいよ」
彼はこう云って眩しそうな眼をした。
「ひとつ受けないか」
暫くすると彼はふいに盃を出した。