Japanische Klassiker mit Furigana
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こうじんぶつ
好人物
佐々木 邦
Lesen Sie 好人物 (こうじんぶつ) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.609 Zeichen · 107 Bildschirme
地代を当って見ると無論市内よりは安い。尚お郊外散歩の積りで再三足を運ぶ中に好いところばかり目に映ってクリーム色の文化住宅に病みつく。これ丈けの道筋を好人物の千吉君は唯一日で行ってしまったのである。
さて、住んで見てから後は、百方工面した家がもう出来上っているのだから、何とも仕方がない。その折は持って生れた妥協性が役に立つ。郵便が一日に一回しか来なくても、その代り一度に五六通受け取れると思い諦める。医者の好いのが少ない代りに空気の好いのが沢山ある。客が来なくて淋しい代りに無駄な費用が省ける。何でも代りがある。代用精神が益※(二の字点、1-2-22)熾んだ。これぐらい諦めが好いと、周囲の畑に撒く肥料の臭も平気になる。
次の日曜に千吉君は安子夫人と八千代さんを伴って候補地の検分に出掛けた。第一に東京から近いことを確信させる為め、
「安子や、一時間未満だったら無条件で降参するだろうね?」
と門を出ながら念を押した。
「一時間未満ということはありませんわ。市内でも浅草なぞは一時間かゝりますよ」
と安子さんは矢張り余程遠いところのように思い込んでいる。
「何分かゝるか、能く時計を見て置きなさい」