Japanische Klassiker mit Furigana
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こうじんぶつ
好人物
佐々木 邦
Lesen Sie 好人物 (こうじんぶつ) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.609 Zeichen · 107 Bildschirme
と牧野さんは実は罰でも詫びでもなく、唯無暗に描きたいのだった。新築祝いだの転任の餞別だのと、何か因縁をつけて持ち込むのがこの先生の癖である。
「それではお序の節何か一つお願い致しますかな」
と千吉君は拠ろなかった。この際辞宜するのは長者に対する礼でないと考えたのである。牧野さんは又々芸者の扇子を塗り始めたが、朱竹を描いて貰ったという米沢君は、
「君、カステラ……カステラ一釜にありついたね」
と囁いた。
「何うして?」
と千吉君が訊き返した時、米沢君は目を瞑って首を振った。
会計課長の牧野さんが立派な表装の一軸に大きな手土産まで添えて千吉君の家へ自身乗り込んだのは、それから一月ばかり後のことだった。
「これは/\、中身さえ戴けば表装は当方で致しますものを……」
と千吉君はかねて聞いてはいたものゝ、今更ながら恐縮した。
「いや、絵との調和を考えましてね、私が直接命じました」
と牧野さんは年配丈けに如才ない。表装をしないでやったら手拭き紙にした奴があったとは仰有らなかった。
「恐れ入ります。早速拝見致しましょう」
と千吉君は床の間の軸を外して掛け替えて、
「竹ですね」