Japanische Klassiker mit Furigana
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こうじんぶつ
好人物
佐々木 邦
Lesen Sie 好人物 (こうじんぶつ) von 佐々木 邦 (ささきくに) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.609 Zeichen · 107 Bildschirme
自惚れ鏡で拝見すると自分の顔が相応に踏める通り、自分の耳で拝聴すると自分の声が相応に聞える。謡曲の積りで歌っていることは本人が承知だ。今の節廻しは好かったと思う。おや、急に途絶えたなと気がつくと、自分の声に聞き惚れて何時の間にか喉がお留守になっていたりする。橋口君は一年ばかり唸った後、この楽しみを分ちたいと思いついて、
「村島君、胃弱には妙薬があるぜ」
と先ず同僚の千吉君に当って見た。
「それは有難い。教えてくれ給え」
と千吉君は直ぐに釣り込まれた。
「教えてくれ給えは有難い。謡曲だよ」
と橋口君は思う壺だった。
「謡曲が胃に利くかね?」
「利くとも。あれをやると腹のへること夥しい。胃病なんかすぐ直ぐに治ってしまう」
「然うかね。僕は又何か真正の薬があるのかと思った」
と千吉君は勧誘だとは覚らなかった。
これを手初めに橋口君がジリ/\迫って来た。何彼の機会に千吉君の気を引く。碁の話が度々出たが、無論敵は本能寺にあった。
「相変らず盛んのようだが、昨今関君との手合せは何うだね?」
「四目だよ。もう一息で四本柱が一本落ちる。尤も先方では五目の積りでいる」
「碁は夫れ/″\自惚れているところが面白い。