Japanische Klassiker mit Furigana
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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
Lesen Sie 孤島の鬼 (ことうのおに) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 181.795 Zeichen · 359 Bildschirme
だがそんなことで、私の怒りがやわらげられるものではなかった。
「あなたは自分のことばかり云っていらっしゃる。あなたはあまり自分勝手です。初代さんは僕の一生涯にたった一度出逢った僕に取ってかけ換えのない女性なんです。それを、それを」
喋っている内に、新たな悲しみがこみ上げて来て、私はつい涙ぐんでしまった。そして、暫く口を利くことが出来なかった。諸戸は私の涙にぬれた目をじっと見ていたが、いきなり両手で、私の手を握って、
「堪忍して下さい。堪忍して下さい」
と叫びつづけるのであった。
「これが勘弁出来ることだとおっしゃるのですか」私は彼の熱した手を払いのけて云った。「初代は死んでしまったのです。もう取返しがつかないのです。私は暗闇の谷底へつき落されてしまったのです」
「君の心持は分り過ぎる程分っている。でも、君は僕に比べれば、まだ仕合せだったのですよ。何故と云って、僕があれ程熱心に求婚運動をしても、義理のあるお母さんがあれ程勧めても、初代さんの心は少しもゆるがなんだ。初代さんはあらゆる障碍を見むきもせず、あくまで君を思いつづけていた。君の恋は充分すぎる程報われていたのです」