Japanische Klassiker mit Furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.161 Zeichen · 412 Bildschirme
それはなんだか兜の鉢のような格好にも見られた。灰色の壙穴の底に朽ち残った戦衣のくずといったような気もした。
この恐ろしい敵は、簔虫の難攻不落と頼む外郭の壁上を忍び足ではい歩くに相違ない。そしてわずかな弱点を捜しあてて、そこに鋭い毒牙を働かせ始める。壁がやがて破れたと思うと、もう簔虫のわき腹に一滴の毒液が注射されるのであろう。
人間ならば来年の夏の青葉の夢でも見ながら、安楽な眠りに包まれている最中に、突然わき腹を食い破る狼の牙を感じるようなものである。これを払いのけるためには簔虫の足は全く無能である。唯一の武器とする吻を使おうとするとあまりに窮屈な自分の家はからだを曲げる事を許さない。最後の苦悩にもがくだけの余裕さえもない。生物の間に行なわれる殺戮の中でも、これはおそらく最も残酷なものの一つに相違ない。全く無抵抗な状態において、そして苦痛を表現する事すら許されないで一分だめしに殺されるのである。
虫の肥大なからだはその十分の一にも足りない小さな蜘蛛の腹の中に消えてしまっている。残ったものはわずかな外皮のくずと、そして依然として小さい蜘蛛一匹の「生命」