Japanische Klassiker mit Furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.161 Zeichen · 412 Bildschirme
さっきから頭が重いようで、気が落ち付かぬようで人に話しかけられるのがいやであったから、ひとりで蔵の間へはいって八犬伝を見たが、すぐいやになる。鯉でも見ようと思って池の間へ行って見た。縁側の柱へ頭をもたせてぼんやり立つ。水かさのました稲田から流れ込んだ浮き草が、ゆるやかに回りながら、水の面へ雨のしずくがかいては消し、かいては消す小さい紋といっしょに流れて行く。鯉は片すみの岩組みの陰に仲よく集まったまま静かに鰭を動かしている。竜舌蘭の厚いとげのある葉がぬれ色に光って立っている。中二階の池に臨んだ丸窓には、昨夜の清香のさびしい顔が見える。窓の縁に頬杖をついたまま、何やら物思わしそうに薄墨色の空のかなたを見つめている。こめかみに貼った頭痛膏にかかるおくれ毛をなでつけながら、自分のほうを向いたが、軽くうなずいて片頬で笑った。
夕方母上は、あんまり内をあけてはというので、姉上の止めるのにかかわらず帰る事になった。「お前も帰りましょうね」と聞かれた時、帰るのがなんだかなごり惜しいような気もして「ウン」と鼻の中で曖昧な返事をする。ねえさんが「この子はいいでしょう。