Japanische Klassiker mit Furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.161 Zeichen · 412 Bildschirme
寝汗が出ていて胸がしぼるような心持ちであった。
起きるともなく床を離れて運動場へおりて月見草の咲いているあたりをなんべんとなくあちこちと歩いた。
その後も毎朝のように運動場へ出たが、これまでにここを歩いた時のような爽快な心持ちはしなくなった。
むしろ非常にさびしい感じばかりして、そのころから自分は次第にわれとわが身を削るような、憂鬱な空想にふけるようになってしまった。
自分が不治の病を得たのもこのころの事であった。
三 栗の花
三年の間下宿していた吉住の家は黒髪山のふもともやや奥まった所である。
家の後ろは狭い裏庭で、その上はもうすぐに崖になって大木の茂りがおおい重なっている。
傾く年の落ち葉木の実といっしょに鵯の鳴き声も軒ばに降らせた。
自分の借りていた離れから表の門への出入りにはぜひともこの裏庭を通らねばならぬ。
庭に臨んだ座敷のはずれに三畳敷きばかりの突き出た小室があって、しゃれた丸窓があった。
ここは宿の娘の居間ときまっていて、丸窓の障子は夏も閉じられてあった。
ちょうどこの部屋の真上に大きな栗の木があって、夏初めの試験前の調べが忙しくなるころになると、黄色い房紐のような花を屋根から庭へ一面に降らせた。