Japanische Klassiker mit Furigana
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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第五巻 (あひるとさる) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.515 Zeichen · 389 Bildschirme
木の皮を煮てかせ糸を染めることまで自分でやるのを道楽にしていたようである。純粋な昔ふうのいわゆる草木染めで、化学染料などの存在はこの老人の夢にも知らぬ存在であった。この老人の織ったふとん地が今でもまだ姉の家に残っているが、その色がちっともあせていないと言って甥のZが感嘆して話していた。
いつであったか、銀座資生堂楼上ではじめて山崎斌氏の草木染めの織物を見たときになぜか涙の出そうなほどなつかしい気がした。そのなつかしさの中にはおそらく自分の子供の時分のこうした体験の追憶が無意識に活動していたものと思われる。またことしの初夏には松坂屋の展覧会で昔の手織り縞のコレクションを見て同じようななつかしさを感じた。もしできれば次に出版するはずの随筆集の表紙にこの木綿を使いたいと思って店員に相談してみたが、古い物をありだけ諸方から拾い集めたのだから、同じ品を何反もそろえる事は到底不可能だというので遺憾ながら断念した、新たに織らせるとなるとだいぶ高価になるそうである。こんなに美しいと思われるものが現代の一般の人の目には美しいと思われなくなってしまったという事実が今さらのように不思議に感ぜられた。