Japanische Klassiker mit Furigana
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「てらだとらひこのついそう」あとがき
寺田寅彦 わが師の追想
中谷 宇吉郎
Lesen Sie 寺田寅彦 わが師の追想 (「てらだとらひこのついそう」あとがき) von 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.239 Zeichen · 65 Bildschirme
化学教室の実験室を借りての話だったもので、中には大きい作りつけの化学実験台が二つも備えつけてあって、それが邪魔になって困った。まずやっと身の置き所があるという程度の部屋であった。
それでも生まれて始めて題目を貰って、自分で研究を始めるのであるし、実験台の片隅を自分の机とすることも出来るので、一同はすっかり物理学者の卵になった気持ちで有頂天であった。皆が急に勉強家になるのもちょっと可笑しかった。
朝学校へ来ると、まず鞄をその机の上に置いて、身軽になって、ノートを一冊もって講義のある時だけ教室へ行く。それが高等学校時代からあこがれていた大学生の生活なのであった。講義は午前中二、三時間だけ聴いて、あとは実験室の片隅で鑢がけや盤陀付けで小さい実験装置の部分品を作ったり、漫談に花を咲かせたり、時にはビーカーで湯を沸かして紅茶を淹れて飲んだりしていた。
時々法科方面の友達などがやって来て「君たちはいいな、僕の方は三百人も一緒に大講堂で大急ぎにノートを取るだけだから、とてもこういう感じは出ないよ」などと羨ましがるもので、益々いい気になっていた。そしてもう会社へはいって金を儲けてなどという考えは、何時の間にかけろりと忘れてしまっていた。