Japanische Klassiker mit Furigana
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こはるのきつね
小春の狐
泉 鏡花
Lesen Sie 小春の狐 (こはるのきつね) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.102 Zeichen · 27 Bildschirme
一つ、別に、この畷を挟んで、大なる潟が湧いたように、刈田を沈め、鳰を浮かせたのは一昨日の夜の暴風雨の余残と聞いた。蘆の穂に、橋がかかると渡ったのは、横に流るる川筋を、一つらに渺々と汐が満ちたのである。水は光る。
橋の袂にも、蘆の上にも、随所に、米つき虫は陽炎のごとくに舞って、むらむらむらと下へ巻き下っては、トンと上って、むらむらとまた舞いさがる。
一筋の道は、湖の只中を霞の渡るように思われた。
汽車に乗って、がたがた来て、一泊幾干の浦島に取って見よ、この姫君さえ僭越である。
「ほんとうに太郎と言います、太郎ですよ。――姉さんの名は?……」
「…………」
「姉さんの名は?……」
女は幾度も口籠りながら、手拭の端を俯目に加えて、
「浪路。……」
と言った。
――と言うのである。……読者諸君、女の名は浪路だそうです。
四
あれに、翁が一人見える。
白砂の小山の畦道に、菜畑の菜よりも暖かそうな、おのが影法師を、われと慰むように、太い杖に片手づきしては、腰を休め休め近づいたのを、見ると、大黒頭巾に似た、饅頭形の黄なる帽子を頂き、袖なしの羽織を、ほかりと着込んで、腰に毛巾着を覗かせた……片手に網のついた畚を下げ、じんじん端折の古足袋に、藁草履を穿いている。