Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.234 Zeichen · 160 Bildschirme
滋幹は、黄昏の色が又一段と濃さを増して、水の面さえ見分けにくゝなって来たので、こゝらあたりで引き返そうかと思いながら、なお何となく心残りが感じられるまゝに、川瀬の石を跳び越え/\、いつか滝の落ち口より上の方へ登って行った。もうその辺は構えの外であるらしく、泉石のたゞずまいも人為的な庭園の風情はなくて、次第に殺風景な山路になっているのであったが、ふと向うを見ると、渓川の岸の崖の上に、一本の大きな桜が、周囲にたゞよう夕闇を弾き返すようにして、爛漫と咲いているのであった。「見る人もなくてちりぬる奥山の」と云う貫之の歌は紅葉を詠じたものだけれども、かゝる時、かゝる谷あいに、人知れず春を誇っている花も亦、「夜の錦」であることに変りはない。恰もそれは、路より少し高い所に生えているので、その一本だけが、ひとり離れて聳えつゝ傘のように枝をひろげ、その立っている周辺を艶麗なほの明るさで照らしているのであった。誰でも経験することであるが、人通りのない暗い夜路などを行く時、たま/\美しい妙齢の女の一人歩きをしているのに出遇うと、男の人に出遇ったよりも却って無気味な恐怖に襲われる。