Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.234 Zeichen · 160 Bildschirme
平中は罪を重ねると云っても、たゞ内々で大納言の妻である人と契り、とき/″\数時間逢っていたに過ぎないのであるが、時平は大納言に僅かばかりの恩を売り、あの老人を前後不覚に酔わしておいて、彼が命よりも大切にしているものを、あっさりと自分の所有に移した。平中の場合と時平の場合と、老人に取って孰方が餘計残酷であるかは言を俟たない。平中は今、自分の過去の恋人がたま/\彼の手の届かない貴人の許へ拉し去られたと云うだけのことに、遣る方ない忿懣を感じているのであるが、老大納言の災厄はなか/\そんな生やさしいものではない。而もあの老人がそう云う災厄を蒙むるに至ったのは、平中が時平に詰まらぬおしゃべりをしたからなのである。平中は、老人を不幸に陥れた元兇は自分であり、老人は何もそのことを知らずにいるのだと思うと、何と詫び言を云ってよいか分らないのであった。
だが人間は身勝手なもので、平中にして見れば、自分よりは老人の方が比較にならぬほど気の毒なことは分っていながら、馬鹿を見たのは誰よりも自分であると云う気がして、ひどく忌ま/\しいのであった。それと云うのが、何分今云ったような事情もあって疎遠になったのであるから、もはやその人に興味を失ったとは云っても、実のところはまだ心底から忘れ去っていたのではなかった。