Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
菎蒻
底冷えのする寒さで眼がさめた。夢からさめたあとの味気なさのせいでもあるが横の蒲団に枕をならべて眠っている妻と子供の顔が鈍い電灯の灯かげの中にたよりなくうきあがって見える。自分の力で支えきれないような不安がどっと胸にこみあげてきたのである。生活の重みに堪えられないというかんじではなくずるずるとすべり落ちた小市民的な感情の中で何時の間にかわれとわが運命の落ちつくさきを思いがけなくも見届けたという気もちなのである。すると、眼にうつる部屋の中の調度や、床の間をうずめている子供の玩具類までが、どっしりと根をおろした生活の中でまだ完全な父親としての覚悟を持ちきれないでいる自分の心に、もうどうにもぬきさしのならぬ人間生活の一断面を見せつけるような宿命感を呼びさますのである。ああこれが生活の実体であった、――と今更のように考えなおさずにはいられないような瞬間の佗びしさに胸をしめつけられるような思いで鷺野伍一はそっと起きあがるとすぐに雨戸をあけた。不意につめたいものが頬をかすめて吹きつける粉雪の白さが眼に沁みるようである。伍一は慌てて雨戸をしめると、
「おい、雪だよ」