Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
あたらしい現実がかたちを整えてうきあがってくるときには感激は消え去って箸にも棒にもかからぬ何ものかが必ず過去に残されるのだ。内狩がかえったあとで窓にもたれている伍一の眼に忍びよるうす闇をとおして雪の色が堪えがたき生々しさを残してうかんでいる。すると、三日前の朝、降りしきる雪の中を足音高く行進してくる軍隊の先頭に立って昂奮した瞳をかがやかしていた若い将校の顔が、彼の頭をかすめ去るのであった。
多吉の兄の丈吉が憔悴しきった顔をしてやってきたのはもう夜が更けてからだったが、彼は外套をぬいで茶の間に腰を据えると、
「ああ」
と、かすれるような溜息を吐きながら神経的に首を烈しく振ってみせた。「いよいよ決心すべきときですね」
おさえきれない思いがうるんだような彼の眼にチカチカとひらめくのを見ると伍一は何も彼もわかっているという風に二、三度軽くうなずいてみせてから、
「それでどうするの、丈ちゃんは?」
「そのことでね」
と、丈吉が沈みきった声で言った。「相談しようと思っているんですよ、――外部の関係者は今日までに百人ちかくいるんですがまったく連絡がついていないらしいんです、だから当分どこかに身をひそめてハッキリした情報をつかんでから進退を決めようと思っているんですが」