Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
「ああいいな、いい子、どうしたの、――今夜はおじちゃんとねんねしようね」
彼は自分の背中を狭苦しい蒲団のそとへはみ出すようにしてマユミの寝る場所をつくってやり、きょとんとしている子供の顔を長いあいだ見つめていた。しかし、この感傷的な場面さえも伍一の頭の中では何時の間にか戯画化されたかたちに変っている。――哀愁が彼の胸の底を足早に通りすぎる陽ざしのようにかすめ去ったことも事実ではあるが、それがために丈吉の感傷に調子を合せようという気もちにはならず、胸をわくわくさせるような幻影の一掃されてしまったあとの寒々とした感情だけが堪えがたきもの、忍びがたきものの中につづいてきた自分の生活を思い出させるのであった。それはやがて、彼の頭の中で蒼ざめた青年将校たちの顔になり、うすぼやけた黄昏の空気をゆすぶってひびいてくるラッパの音になり、希望でもなければ絶望でもないあらゆる悲惨な事実を歴史のひと閃きの中で見失ってしまう宿命的なたよりなさに変ってきた。すると事件は何一つ終ったのではなく、あとからあとから起ってくるということにまだ堪えてゆかれそうな自分が始末に負えない人間のようにも思われてくるのであった。