Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
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丈吉が大阪にいる友人をたずねて東京を逃げ落ちる決心をしたのはあくる日の朝だった。玄関で前かがみになって靴の紐を結んでいる丈吉のうしろから、伍一が「駅まで送ってゆこうか?」と声をかけると彼は慌てて立ちあがり、
「いいんですよ、――そんなことをされたんじゃあ」
と、言いかけてから、障子のかげから顔を出してきゃっきゃっとさわいでいるマユミを見るとこみあげてくる気もちを微笑にまぎらし、
「いい子だね、――待っているんだよ、今におじちゃんがおみやをどっさり持ってかえってくるからね」
肩をおさえようとして伸ばした手をマユミは無心な素振りでそっと外らしながら障子のかげにかくれたが、丈吉は上から見おろしている伍一の顔に愛惜の思いをこめた視線を投げて、「御厄介ですが多吉のことだけよろしく」と急に紋切型の言葉で挨拶してから格子戸をあけると、マユミがぬっと顔をだし、
「おじちゃん」
と、疳高い声で呼びかけた。「おみやを忘れちゃ駄目よ」
すると丈吉は眼をしょぼしょぼとさせながら、
「さよなら、――ね、さよなら」
と、幾度となく会釈をして出ていった。雨になりそうな空模様で、木の根や垣根の下に氷りついている雪が埃をあびてうす黒い色に変っているのが急に伍一の胸に痛々しいかんじを唆った。