Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
朝であったか午後であったか、はっきりわからないが、ざらざらの頬髯に包まれた叔父の横顔に窓から洩れる陽ざしが落ちて、骨張った蒼白さがうきあがって見えたことだけ覚えている。そのとき叔父は事務室の椅子を踏み台にして立ち、じっと首を傾けながら柱時計の振子の音に耳を澄していたのだ。
「これはいかん。――良さん、おい、しっかりしないといけないぜ。お前の悪口を言ってるぞ」
叔父は頓狂な声をあげて、今着いたばかりの行嚢をいじっていたわたしの兄を呼びかけた。叔父の眼は何かおそろしい凶兆を感じた人のようであった。
「哲! 何を言うか。貴様はもう家へ帰れ!」
急に眼鏡をかけた父の顔が現われて叔父の首筋をつかんで椅子の上からひきずりおろした。
叔父は彼の兄であるわたしの父の局長をしている郵便局に事務員として傭われていたのであったが半歳ほど前から気が少しずつ変になりかかっていた。元来が無口な性質であったが、一日むっつりとして黙っている日が多くなり、それから数字に対する観念が朦朧としてきた。わたしの父が算盤で叔父の眉間をなぐりつけたのを見たことがある。彼はそのとき葉書を二十枚買いに来た男に間違えて五十枚渡してしまったのであった。