Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
父の居間に久しぶりで叔父の声が聞えたのでわたしが入っていってみると、痩せほほけてすっかり容貌の変ってしまった叔父が鼠のように体躯をかがめながら、口を尖らして早口に何か饒舌っていた。
「何だ――これがほしいのか?」
父が何時になく柔和な顔をしているのがうれしかった。父は煙草入についていた赤い珊瑚珠をとって、それを叔父の膝元へころがしてやった。叔父はそれをうけとって何べんも父にお辞儀をした。赤い色がどうして叔父をひきつけたのかわたしは知らない。その頃、彼の枕も蒲団もすべてが赤いきれによって掩われていたのだ。――
数日の後叔父は死んだ。その前後の記憶はわたしの頭の中に無い。叔父の生死がその頃のわたしの生活にとって全く没交渉であったからででもあろう。しかし、父について、あるいは兄について考えるとき、わたしはこの叔父を想い出さないでは居られない。彼はわたしの子供の頃に死んでしまっているので、わたしの家の没落については何の関係も持っていないのにもかかわらず、彼に絡る記憶が一族の将来に対して何事かを暗示していたような気がしてならないのである。
叔父は俳人であって号を松声と言っていた。