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Japanische Klassiker mit Furigana

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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme

Aozora Bunko

「どんなことが起るかも知れん。それに俺もこの身体じゃあ、あまり長くないからの。学校に入っとれる間だけ儲けものだと思っとくれ。なあに、まだ二、三年は平気だがの」

歩きながら父がわたしに言った。中学を卒業したわたしはその日の夜の汽車で東京へゆく筈であった。風の強い日であった。堤防へ続く一筋の道が菜種畑を横切っていた。馬車屋はN町の入り口にあった。わたしたちがN町へ着いたとき馬車はちょうど出るところだった。客はわたしのほかに二人しかいなかった。わたしは窓に近いところに席を占めて風呂敷包を膝の上に置いた。馬車が動きだすまでに五、六分の合間があったが父は黙って立っていた。

やがて馭者が鞭をふりあげたとき、父は急に窓に近づいてきて、

「あとから荷物と一所に送るものはないか?」

と言った。

「ない」

とわたしが答えたとき馬車が動きはじめたので父は口をあけたまま二、三歩背ろへ退いた。

わたしは、そのときほど強くわたしの顔をじっと見詰めている父の眼を感じたことがない。馬車は二、三町先きから右に曲った。曲り角でわたしは何かしら、もう一度父の顔をたしかめたいという衝動を感じた。